医療用弾性着衣を「つけたくない」と感じている方へ――身体と暮らしに合う使い方を考える
2026/10/04
医療用弾性着衣を「つけたくない」と感じている方へ――身体と暮らしに合う使い方を考える
「リンパ浮腫にはなりたくない。でも、弾性着衣はできればつけたくない」
serapiAで、よく伺うお気持ちです。
着脱の大変さ、見た目、暑さ、費用。毎日の生活に取り入れることを考えると、ためらう理由はさまざまです。
私自身も医師の指示で医療用弾性着衣を着用しているため、その大変さを日々感じています。今回は、装着指示書のことと、弾性着衣を身体や暮らしに合わせて活用することについてお伝えします。
装着指示書には、必要な理由と圧迫の条件が記載されます
医療用弾性着衣は、見た目やサイズだけで選ぶものではありません。どのような疾患に対して、どの部位を、どれくらいの圧力で圧迫する必要があるのかを確認することが大切です。
厚生労働省では、療養費の申請に用いる装着指示書として、リンパ浮腫治療用と、慢性静脈不全による難治性潰瘍治療用の様式をそれぞれ示しています。
リンパ浮腫治療用の様式には、悪性腫瘍の術後か原発性かの区分、診断名、装着する部位、弾性着衣等の種類、着圧などの記載欄があります。
なお、ご紹介する資料は2021年の様式改正に関するものです。疾患別の記載内容に加え、押印廃止に伴う変更が示されています。
装着指示書があれば、どのような目的の購入でも療養費の対象になるわけではありません。購入前に、医師と加入している健康保険の窓口へ対象条件や必要書類をご確認ください。
厚生労働省:リンパ浮腫治療用の装着指示書・関連通知
厚生労働省:慢性静脈不全による難治性潰瘍治療用の装着指示書・関連通知
「まだむくんでいないけれど、心配」というご相談
serapiAにご来店されるお客様の約9割は、がんの治療を経験されている方です。リンパ浮腫の予防や、変化の早期発見を目的に、定期的に通われている方が多くいらっしゃいます。
大きな治療を終え、目立った症状がない方。すでに張りや重だるさなどを感じている方。抗がん剤治療中から通い始め、治療終了後も身体の確認を続けている方。それぞれの状況や目的は異なります。
来店当初は気になる症状がなかった方から、次の来店までの1か月ほどの間に、
「何だか肩や背中が張る感じがする」
「脇の下に、ものが挟まっているように感じる」
と伺うこともあります。
こうした違和感だけで、リンパ浮腫と判断することはできません。ただ、見た目だけでは分かりにくい変化もあるため、以前の計測値や皮膚の状態、ご本人の感覚を確認することを大切にしています。
「もう発症しているのではないか」
「もしそうなら、早めに対応したい」
その不安を一人で抱えず、気になる変化は主治医やリンパ浮腫外来にもお伝えください。
「絶対につけたくない」が、試着で変わることも
予防目的でご来店される方のほとんどから、最初は「弾性着衣はつけたくない」というお話を伺います。
着脱の大変さや見た目に加えて、購入をためらう理由の一つが価格です。
医療用弾性着衣は、製品によって異なりますが、薬局などで購入できる「メディキュット」「スリムウォーク」などの一般向け着圧製品と比べ、高額な商品です。
「自分の身体に合うか分からないものに、これだけの金額をかけるのは迷う」
「洗い替えも必要だと思うと、すぐには購入を決められない」
そう感じるお気持ちは、私自身も着用しているからこそ、よく分かります。必要性を理解していても、費用は簡単に割り切れるものではありません。
ただ、一般向けの着圧製品を、医師から指示された弾性着衣の代わりとして自己判断で選ぶことは避けていただきたいと思います。身体の状態に合った圧迫圧やサイズ、形状を確認することが大切だからです。
だからこそ、ご予算や購入への不安も遠慮なくお聞かせください。必要な機能や着用場面、着脱のしやすさを確認し、療養費の対象となる場合は制度についても確認しながら、納得して選べるようお手伝いしたいと考えています。
特に、生地がしっかりした製品では、試着中に、
「何これ、上げづらい〜!」
と思わず声が出ることもあります。
ところが、着用してみると、
「着けていると楽」
「これなら1着、持っていてもいいかもしれない」
と、お気持ちが変わる方もいらっしゃいます。もちろん、感じ方には個人差があります。
また、医療用弾性着衣には丸編みと平編みがあり、丸編みも医療用として使われます。「医療用だからすべて硬い」というわけではなく、製品によって素材や伸び方、着脱のしやすさが異なります。
大切なのは、身体に必要な圧迫と、日常生活で使い続けられることの両方を考えることです。
医療用弾性着衣は、素材や形状、着脱のしやすさなど、改良が重ねられています。私は、その変化を「いわば生き物のよう」と感じています。
そのため、私たちセラピストも、一度選んだ製品をずっと正解と考えるのではなく、新しい情報と、その方の今の状態を確認することが大切です。
一人ひとり性格が違うように、体型、感じている症状や違和感、生活習慣、仕事内容も異なります。同じ方でも、治療の経過や体型、活動量の変化によって、必要な着衣や使いやすさが変わることがあります。
「以前は身体に合っていたのに、最近は何だか合わない」
そんなときは、我慢して使い続けず、ご相談ください。身体の変化だけでなく、着衣の劣化や、製品の仕様変更なども含めて確認し、見直していきます。
選んだときだけでなく、使い始めてからも、その方の身体と暮らしに合っているかを一緒に確かめていきたいと思っています。
0期の方にも、必要に応じて活用してほしい
私は、リンパ浮腫セラピストであり、看護師でもあります。
身体の状態だけでなく、仕事内容、活動量、着替える場所や時間、手の力、そしてご本人の希望まで含めて考えたいと思っています。
リンパ浮腫の「0期」は、見た目に明らかなむくみがなくても、リンパ液を運ぶ機能が低下している段階を指します。ただし、リンパ節を切除した方や無症状の方が、全員0期というわけではありません。
私は、0期と評価された方にも、必要に応じて弾性着衣を活用する選択肢を知っていただきたいと考えています。
一方で、すべての方に予防目的の着用が必要とは限らず、着用すれば必ず発症を防げるわけでもありません。医師による評価や指示を踏まえて、着用の必要性、圧迫圧、着用する時間や場面を検討します。
すでにリンパ浮腫を発症している場合も、ご自身の判断で着用時間を減らすのではなく、治療方針に沿って調整することが大切です。
serapiAでは、ご本人の希望を伺いながら、計測、皮膚の確認、スキンケア、無理のない運動なども含め、暮らしの中で続けられるケアを一緒に考えます。
私も、毎朝の着用にひと苦労しています
私はリンパ浮腫ではありませんが、心疾患があり、主治医の指示で大腿部までの長さの医療用弾性ストッキングを着用しています。
毎朝、履き終えた瞬間には、
「今日の一仕事、終わったー!」
と思わず言葉が出るほどです(笑)。
横着して着用用のグローブを使わず、ストッキングを引っ張り、破ってしまったこともあります。
医療用ストッキングやスリーブは、決して安いものではありません。破ってしまった朝の残念な気持ちは、その日一日、引きずることも……。
それでも、私自身は、着用している日としていない日では、むくみの感じ方に違いを感じています。
これはあくまで私個人の体験です。心疾患がある方の圧迫療法は病状によって適否が異なるため、必ず主治医に確認してください。
使う側の大変さを知っているからこそ、「必要ですから着けてください」という説明だけで終わらせたくありません。
履き方や着用補助具の使い方、生活の中で困ることまで、一緒に考えていきたいと思っています。
「つけたくない」という気持ちも、お聞かせください
弾性着衣への抵抗感には、その方なりの理由があります。
見た目が気になる。
仕事中に使いづらい。
着脱に時間がかかる。
費用が負担になる。
その気持ちも、ケアを考えるうえで大切な情報です。
serapiAでは、定期的な計測と皮膚の状態確認を通して身体の変化を一緒に振り返り、必要に応じて医療機関への相談をご案内しています。
「まだ目立つむくみはないけれど、気になる」
「弾性着衣を勧められたけれど、使うことに迷っている」
そんな方も、ご相談ください。
医療用弾性着衣は、日々改良されています。
身体の状態と、これからも大切にしたい暮らしの両方を考えながら、無理なく続けられる方法を探していきましょう。

